素直になれない


「あの、」

一番近くで話していた女子グループに声をかけた瞬間、そのグループの女子達が目を見開いた。
何だと七海が思うより先に、女子達は嬉々として一気にまくし立ててきた。


「どうして中瀬くんと一緒にいたの?」
「中瀬くんと知り合いなの?」
「朝のあれは何が原因だったの?もしかして中瀬くんが喧嘩ふっかけた?」


口々に言う。
私は聖徳太子じゃない、と思いながらも七海はひとつの言葉に意識を奪われた。

「中瀬…くんって?」

呟きに近い声音で言えば彼女達の顔から志気が消え去り、しかし代わりに好奇心の色が見える。
瞳がそれをひしひしと伝えてくる。

一体何なのだろう?

「もしかしなくても…中瀬くん知らないの?」
「知らないけど」

言うと彼女達はがっかりというような表情になり、しかし安堵の息も吐いた。

訳が分からず呆けている七海に、グループの一人が苦笑を漏らしながら話しかけてきた。

「ごめんごめん。ちゃんと説明するね」

そうしてから七海の袖を掴み、彼女は空いていた椅子に座らせた。
もちろん自分も座り、他の人達も座る。



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