素直になれない


「悪ってもんじゃないよ!喧嘩なんて日常茶飯事。学校には来ない。一週間に二日来たら良い方なんだから」

それは凄まじい。
七海は苦笑いする。

「まぁでも、私たちにはそんな事関係ないけどね。格好良くて、学校来てないのに頭良くて、それでいて影がある。最高じゃない?」

そんなものだろうか。
きっと彼女の反応は普通の女子高生の反応なのだろう。

若干年寄り思考のある――平和が何よりで日常にスリルを求めていない七海にはあまり理解できない内容である。

「ね、琴倉さんも中瀬くん素敵だって思うでしょ?」

どう答えようか悩む。
実際に思っていないのに話だけを合わせるのは七海のポリシーに反しているので、余計に悩む。

「――玉の輿って点では素敵物件じゃないかな」

散々悩んだ果てに口にしたのがこの言葉だ。
容姿端麗とか成績優秀だとか特に気にしていない七海だが、将来玉の輿になれる可能性を考えたら好物件だと素直に思う。
一介の女子高生の考えとしては、大分不純だとは自分でも思ったけれど。

七海が言った瞬間、どっと笑いが起きた。


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