素直になれない
印象。
――春。
それは別れの季節。
涙を瞳に浮かべ別れを惜しむ姿は、当事者でなくても心打たれるものがある。
長年連れ添った友と、ましてや恋人と別れるこの時期は、涙なくしては語れない。
けれどもそんな別れ意外にも辛い事は多々あるのだ。
それは受験であったり就職活動であったりと理由は様々だが、身体に疲労を蓄積させるには申し分ない事物である。
それは今現在、豪快に食パンをかぶりついている少女にも言えることだった。
少女の名前は琴倉七海(ことくらななみ)と言う。
両親の転勤の都合で今住んでいる家を手放すことになり、それに伴い春から高校を変えるために、高校2年生にして数週間前までは受験勉強――正確に言えば編入試験の勉強――をしていたのだ。