素直になれない


無事、試験には受かったものの、それ故に疲労困憊。

精神的肉体的疲労と共に、友との別れを色濃く経験したものだから、別れの季節たる春は彼女にとって忘れがたい季節となった。


友と別れ、ずっと住んでいた土地を違えてから今日まで、七海は何もせず呆けて過ごしてきた。
けれどもいつまでも怠けている時間もなく今日から新学期なのであった。



七海が今日から通う学校は都内でも有数の進学校で、公立高校にしては設備も充実しており立地条件もすこぶる良い。
それらメリットを含めて、七海はこの学校を選んだのだ。

準備時間が足りていなかったが、それは彼女の努力とガッツで補ったと言えよう。


今日から始まる彼女の新たな世界に、緊張と不安を抱えながらもやはり逸る心臓は素直だった。

朝から鼓動が耳につく。

編入ということもあり、大昔に遂げた高校の入学式よりも緊張は大きい。
けれどもやはり楽しみな気持ちの方が大きく胸を支配していた。



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