素直になれない


はっとして七海が顔を上げる。
助けて貰ったのにそういえば何も言っていなかった、と申し訳ない気持ちで青年を見上げる。

しかし青年を見た瞬間、七海の好奇心が発動してしまい七海はじとりと凝視して青年を観察してみた。

文字通り、青年は見上げなければいけない身長をしていた。
七海とて女子高生の平均身長よりは高い自身があるのだが、それでも首を大分曲げなければいけないほどの長身だった。

黒髪が風に靡く度に、それが青年の漆黒の瞳を隠す。
その所為で表情がよく分からない。


けれども七海は青年の瞳を綺麗だと思った。
何故か、理由は分からないけれど何か強い意志が感じられた。
不思議な色を放つ宝玉に、七海は魅入ってしまう。

一際強い風が吹いて、前髪が揺れた。
もう青年の表情を邪魔するものはない。


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