ヘタメガ!
◆
ーーーーーー縄を解き、そこらへんにあった男子の体操服を貸す。(机に『借ります』とメモを残す)
ボサボサの髪を直し、涙を拭ったデカい犬はくるくると、こちらを見つめた。
しかしどこかで見たことある…。
キラキラした尊敬の眼差しビームをサッとよけながら、美姫はハッとした。
やっとこの犬が噂の崇城先輩という事に気が付いたのだ。
いつものお洒落眼鏡をしていなかったから全然気が付かなかった…。
整った顔立ちを見つめ、冗談じゃないときびすを返す。
くるくるとせわしなく動くあの瞳のように、女を取っ替え引っ替えしていると噂の色惚魔、崇城純一。
ハラませた女に無理やりおろさせたとか、8股伝説だとか、とにかく女の敵。
しかし惑わされる女は後を絶たない。
そんな噂、美姫にとってどうでも良かったが、今目の前でその人物がこちらを見ているとあれば例外だ。
とにもかくにも、ハラまされるのだけはごめんだ。
「…ついてこないでください。」
「いや、せめてお礼だけでも…。」
「結構です。」
美姫の三歩後ろに純一。
警戒されているのがヒシヒシと伝わっているのだろう。
妥当な距離感だ。
でも純一は引かない。