ヘタメガ!














ーーーーーー縄を解き、そこらへんにあった男子の体操服を貸す。(机に『借ります』とメモを残す)


ボサボサの髪を直し、涙を拭ったデカい犬はくるくると、こちらを見つめた。



しかしどこかで見たことある…。



キラキラした尊敬の眼差しビームをサッとよけながら、美姫はハッとした。


やっとこの犬が噂の崇城先輩という事に気が付いたのだ。

いつものお洒落眼鏡をしていなかったから全然気が付かなかった…。


整った顔立ちを見つめ、冗談じゃないときびすを返す。


くるくるとせわしなく動くあの瞳のように、女を取っ替え引っ替えしていると噂の色惚魔、崇城純一。



ハラませた女に無理やりおろさせたとか、8股伝説だとか、とにかく女の敵。

しかし惑わされる女は後を絶たない。




そんな噂、美姫にとってどうでも良かったが、今目の前でその人物がこちらを見ているとあれば例外だ。



とにもかくにも、ハラまされるのだけはごめんだ。

















「…ついてこないでください。」



「いや、せめてお礼だけでも…。」




「結構です。」




美姫の三歩後ろに純一。



警戒されているのがヒシヒシと伝わっているのだろう。

妥当な距離感だ。

でも純一は引かない。






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