はさみとわたし
1
「…もう一度だけ…」
「…ううん、もうだめだよ…」
<神様はもう、私たちの赤い糸を結んではくれないのよ>
いつか私は、そんな悲しい言葉を彼に放った。
前々から言おうなんて思ってなかった。
だけどその時、勝手に口から出てきたの。
彼の瞳には、私が写っていたと思うけど。
私の瞳には、いつの間にか彼は写っていなかった。
好きだったけど。
大好きだった、愛していたけど。
だけど、気持ちのジェンガが少しだけ揺れていたんだ。
いつか倒れてしまうことを恐れながら…。