BABY×DOLL
「なぁんだ。ファンだから虎之介が病院に来るのが楽しみなのかと思ったわ」

彼女が残念そうな顔をした。それをさらに突き放すように私は答えた。

「あぁ私、ファンっていないから」

この病院に勤めるようになってから芸能人を見かける事に慣れてしまっていた。

でもファンとかってホントに居ないし、別にそんなのどうだってよかった。
まさに無関心といった感じだった。

それより困るのは
VIPに入る患者ってワガママが多いのよ!

自己チューばかりで、ハッキリ言ってしまえば私にとって迷惑な患者以外の何者でもなかった。

それにタレントでしょ?しかも森島虎之介を射止めたんだもの。
たいそう高飛車になってるに違いない。

『今度のお姫様はどんな方かしらね』

等と看護師仲間から嫌味のように言われるくらい、私達をメイドか何かと勘違いしてる女が多かったのに

──彼女は違った。



彼女は今までの'自称セレブ'患者よりも…ううん、一般の患者さんよりも丁寧で

物分かりがよく愛想も良かった。

彼女のファンの人がいれば嫌な顔一つさせずに写メを一緒に撮ったりしていた。

こんな人もいるんだ…

私は少し、彼女を見直した。
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