BABY×DOLL
抱きしめていると涙が溢れてくる。

あたしは涙を拭い、大切に赤ちゃんを抱いたままバッグの中を探った。

中からは水筒や粉ミルク、哺乳瓶、紙オムツ、ガーゼやウェットティッシュ等と共に手紙らしきものが出てきた。

あたしは携帯のライトをつけて、若干頼りない灯りの元で琉嘉からの手紙を読んだ。


…手紙ってよりは注意事項や、この後の行動についての琉嘉が考えた計画なんかが書いてあった。

それを一字一字、ゆっくり頭の中に入れながら読んだ。

何も知らないあたしにとって、この細かすぎるくらいの指示書は逆に有り難かった。

これなら…大丈夫。

少し安心したところで、さすがに寒い事に気付いた。

そうよね、今が一番冷える時間帯だもんね。

赤ちゃん…バッグの中は寒いよね?

あたしはダウンジャケットで包むように彼を抱き、持ってきたカイロで少し暖を取る。

足元はまるで凍るんじゃないかってくらい寒いのに、胸元だけは暖かい。

赤ちゃんの鼓動も伝わってきて、ちょっと幸せな気分だった。

「寒いけど、もう少しガマンしてね?あたしも頑張るから…」

響かないように小さな声で語りかけ、あたし達は夜が明けるのを待った。
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