BABY×DOLL
電車が走行する音に紛れて、バッグの中から

赤ん坊特有の泣き声が聞こえてきた。




   起きた…!!






あたしの頭の中で一瞬にして妄想が駆け巡る!

連絡を受けて赤ん坊捜索に出ていた警察が、

市民の目撃情報を頼りに犯人が電車に乗り込んだと推測し
各駅に配備されていて

どこかの駅に降りた途端、背格好や持ち物が似ているあたしを取り囲み…ほどなく赤ちゃんが発見されて

あたしと琉嘉が捕まる!


そんなのダメだ…!

あたしの身体は凍りついた!全身から冷や汗が流れ出す!

心臓は大きく動き、バッグを持つ手は震えていた。

ドキン、ドキン、ドキン…

…見てる…見られてる…周りにいる乗客に…

赤ちゃんの声を聞かれてる……

どうしよう…ごまかすように慌ててトイレに入るのも不自然だ。

それにトイレがついている車両は隣だし…

このままココにいて、赤ちゃんが本格的に泣き出したりしたら…

赤ん坊をバッグに入れてるなんて、明らかに不審者だ。

気持ちの悪い汗が頬を伝って流れた時、電車のドアが開いた!

…駅だ…!
降りるしかない!!


あたしは考える間もなく電車から飛び出した。
< 193 / 408 >

この作品をシェア

pagetop