BABY×DOLL
前に会った時、確かにそう言ってたのを思い出した。

結婚もしてるだろう人が…妻以外の他の女とホテルに入ってるだけでも大問題だと思うけど?

あたしの言葉に一瞬、彼は寂しそうな顔をさせて…静かな笑顔で答えた。

「アレは…ちょっと訂正。今、現在の話をすると──僕に『奥さんも子供もいない』ってのが正しい」

「いない、って…」

「子供は一年前に死んだし、奥さんとは別れた」

「嘘、死んだ…の?」

「だから僕はキミに協力できるってワケ。独りだから自由だしね」

何故、子供が死んだの?何故奥さんと別れたの?

理由を聞いてみたかったけれど、聞けなかった。

嘘みたいな話しだと思う。でも本当の話かもしれない。

どちらにしろ、彼は理由を言わなかったし
言いたくなさそうだった。

この人は信用できるの?

わからないけど…彼はあたしがしている事を知ってしまった。

「僕に何かできる事があるなら協力するよ」

──このまま野放しにはできない──

「協力、か…」

「赤ん坊の面倒とか大丈夫なのか?一緒にいる人に育児の経験は?」

「それは平気。とにかく…また連絡するから」

それだけを言って、あたし達はホテルから出た。
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