BABY×DOLL
そう言われて、彼女は大人なんだと思った。

普通ならもっと責めるだろうし酷い言葉を投げつけてきても仕方ないと思っていたのに。

岩村さんは美来ちゃんの隣に腰掛け、美来ちゃんの顔を見ながら言った。

「私ね、差別されてる気がしてるのよ」

「差別、ですか?」

「病院側からは'芸能人の子供の方が大事'って感じに見えるの」

少し胸が痛くなった。

少なからず当たっているからだ…

「森島さんの赤ちゃんの事ですね」

「頭では分かってるのよ?子供が居なくなったなんて、親からすれば死にたくなるくらい辛い事だし、病院だって大変なのもわかる」

「…」

「でもね、向こうの方がたくさんお金を払って入院してるせいか、普通に入院してる美来の事をないがしろにしてる気がして…」

「…わかりません。でも、病院側は多少そう思ってるかもしれません」

私は…?

一緒に扱ってたかな?

VIPだから、とクレームがこないように他の患者よりは特別に接してたかもしれない。

それを彼女は肌で感じてた…

そう思うと、途端に今までの自分の仕事ぶりが恥ずかしく思える。

誰だって、何者だって、私が担当する相手は一人の人間なんだよね?
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