BABY×DOLL
すれ違いざま、彼らの会話を少しだけ聞く事ができた。

「明日の仕事は?」

「ドラマ撮りがあるからな。病院に来れるのは遅くなるぞ」

「そうだよな。でも仕方ない、か」

「そういえば社長がさ…」

…何なの?
普通の仕事の会話?

もっと違う反応を私は期待してた。
父親らしい慌てぶりや動揺…そんなのは最初から一度も見せなかった。

何故…そんなに冷静なの?

父親ってそういうもの?やっぱり自分で産んでないから愛情が薄い?

それにしたって妻である小林仁奈のそばに
常に寄り添って支えてるワケでもないし…

仕事優先してるみたいだし。
芸能人ってみんなそうなのかな?

とにかく私は彼のその態度が気になって仕方ない。

どういうつもりか聞いてみたいけど無理だし。

ちょっともどかしい…

私はため息をつきながら仕事をしていた。



数時間後、ようやく一日の仕事を終え私は帰ろうと着替えてロッカールームから出た時

目の前に一人の女性が立っていた。

「小西さん…だったわよね?」

「!!」

上品そうな服装に性格がキツそうな印象のメガネをかけた女性。でも年齢よりは若く見える。

私は驚いた。



正己の…奥様だ。
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