BABY×DOLL
「もう仕事終わりかしら?」

「え、えぇ…」

私の私服を見てわかるハズだ。だから声をかけてきたに違いない。

「少し時間あるかしら?お話があるのよ」

──きた…

もしかするとって少し思っていたけど、まさかこんなに早く妻が現れるなんてね。

私は心臓をドキドキさせながら、それでも強気な顔をして見せた。

「平気ですよ。どちらで話しますか?」

「院長室へ行こうかしら」

「いいんですか?誰かに見られるかもしれませんよ」

「そんなもの、理由なんて何とでも言えるわ。行きましょうか」

彼女も強そうだ。
私は素直に彼女の後をついて行き、院長室へと入った。

もちろん中は誰も居ない。

「…何のお話ですか?」

早く話しを終わらせたくて、部屋に入るなり私から話しをキリ出した。

「貴女の事は…院長から聞いたわ」

「…そうですか」

正己との関係の事だとすぐわかった。
いや、それ以外ないんだけど…それで一体何を話すの?

「次の職場は決まっていたの?」

「いいえ。急な話しだったので…」

「そう。何かやりたい事でもあるのかしら?」

「…は?いえ…」

「じゃあ、しばらくこの病院に残ってくれないかしら?」
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