BABY×DOLL
『行かないって…琉嘉、何を言ってるの』

「行く必要ないわよ」

『母親なのよ?そりゃ…勝手に家を出て行った子だけど。それでもたった一人の母親なんだし』

…その
'たった一人の母親'が私に何をした?

久しぶりに電話してきて、何て言ってた?

あの電話での会話を思い出せば思い出すほど、〈乳ガン〉はフェイクな気がする。

本当はお金が欲しいだけなのよ。

たとえ本当に乳ガンでも早期発見なら治る可能性が高いし…あの人が死ぬはずない。

「とにかく、私は行く気にならないから。おばぁちゃんがどうしても行きたいなら…病院まで連れて行ってあげるし」

『琉嘉…お前…』

「会いたくないの。わかってよ」

『と、とにかく病院の名前と住所教えるから。それと休みはいつなの?』

私にとっては嫌な母親だけど…おばぁちゃんからは、あんなんでも大事な娘なんだろう。

だから会いたいと思ってる事や、心配とかしてるのは理解できるけどね…。

次の休みは…セリカが出掛けると言っていたのを思い出しながら、私は答えた。

「休みは来週になるわ」

『…そう。じゃ病院の住所教えるわね』

そう言って半ば強引に言われた住所をとりあえずメモった。
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