BABY×DOLL
行く気がない事を何度も言って私は電話を切った。

とりあえずメモした病院の名前は知っていた。

どこにあるのかも、それが今いるマンションからわりと近い事も知っていた。

それでも、多分私は行かないと思う。

会ってまた嫌な思いをするのがイヤだし、絶対に会った事を後悔するだろう…それがよくわかっていた。

嫌だと思う事を回避するのは防衛本能でしょ?

心にキズを負いたくない。

───忘れたい。


例え母親が死んでも、このまま会う事なくあの人がこの世を去っても、私の世界は何も変わらない。

世界は変わらず廻り続ける。

後悔もない。



母親の事を心の片隅にある小さなスペースに無理矢理、押し込んで扉を閉めた。


  コレデイイノ…




私はマンションへと戻った。

明日は休みだって思うと、少しゆったりできた。
今の状況で家から出るって事は、結構ヘヴィだ。

一応、尾行されてないかって、まだ警戒してたし…

部屋で龍之介を抱き上げ、私は話しかける。

「明日は琉嘉ママと一緒だよ!嬉しいね~」

龍之介が笑顔を見せる。
私はそれで毎日癒されていた。

可愛い龍之介。
なのに私は異変に気づかなかった。
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