BABY×DOLL
「じゃ、行ってくるね」

セリカが身支度を整えて玄関へ向かった。

いつものように帽子とメガネで『変装』して。

…だからセリカのは変装じゃないのよね。

目を隠しても『中森セリカ』だとわかるくらい彼女は変装がヘタだった。

私も龍之介を連れて玄関へお見送り。

「セリカ、帰りは何時頃になるの?」

「暗くなってからにするわ。ふふ…いつもと逆だね」

「たまにはいいんじゃない?セリカも外に出たいでしょ」

「うーん…少し、ね。じゃ龍之介ヨロシクね。行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

その言葉がなんだか新鮮だわ。

そう思いながらセリカを送り出した。

「さて、と!龍之介!遊ぼうか」

特に掃除する必要もないし、テレビもないし、趣味もないし。

一日中、何もかも忘れてのんびりと龍之介をかまっていよう!

彼は生まれたばかりだから、それほど動かないんだけど

それでも日々成長してると思う。

子供の成長ってスゴい。一日でスゴいスピードで大きくなってる。

こんなに小さくても…きっと何かを学んで吸収してるんだろう。

赤ん坊でも、やっぱり母親が必要だって事も──十分すぎるくらい知っていた。
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