BABY×DOLL
───頭にくる…

何なの?普通あんな事言う!?

あたしに価値がない?

あたしにはまるで何もないかのように言われた。
人間として価値がないみたいに彼女は言う。

あたしは…中森セリカよ?

稼げるタレントだったし、周りにもチヤホヤされてた!

あたしがただの人間なんだと思いたくない。

…そんなんじゃない
絶対違う…










  違う…


 違う───そう思いたいのに

確かにその通りだと知っている自分がいる…

ホントは自分でもわかってるの。
あたしには価値なんてないって事くらいわかってる。

普通の人間よ。
子育てだって何一つできないし

あたしなんかより仕事もできてしっかりしてる琉嘉の方が

数倍価値がある。

知ってるけど、遠藤さんに言われて悔しかった。

悔しくて涙が出る。

自分で自分の事はよくわかっていたからこそプライドを盾にして生きてきた。

それが必要だったから。中森セリカとして生きていく為の防御壁。

だけど、今は粉々に砕け散ってしまった。

これから仕事をどうするかなんて考えられない。

努力?
何を努力すればいいの?

ただ…【引退】の二文字が頭の中を駆け巡っていた。
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