BABY×DOLL
彼女の突拍子もない質問にあたしは聞き返した。

「き、奇跡って言った?」

「うん。奇跡や夢や希望や…そういうもの」

今、わざわざ仕事中に電話してきて聞く事?なんて不思議に思いながら、ちゃんと考えて質問に答えた。

「信じたいし、あるって思うよ?そうでなきゃ…生きていても仕方ないよ」

今、思い出したのは虎之介とのこと。

彼の裏切り──中絶。

あんなに『夢であれ』と願ったのに奇跡は起こらなかった。

それでも信じたい。この世に神様がいるってこと。

叶わないから、奇跡は尊いものだと。

だから価値があるものなんだと思うし。

「琉嘉は信じてないの?」

「ん。正直あんまりね。私には奇跡なんて起こらない…そう思ってたんだけど」

「うん、何かあったの?」

「病院の患者さんでね、龍之介と同じ頃に生まれた赤ちゃんが突然、意識不明になって。それからずっと眠ったままだったの」

「起きないの?」

「このまま植物状態になって…いつか死ぬのだと思ってた。で、今日」

「え、死んじゃったの?!」

話しの流れで、そうだと思い込んだあたしは、そう聞いてしまった。

「逆!さっき目を覚ましたのよ!」
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