BABY×DOLL
そう言って車に戻ろうとした遠藤さんに向かって、あたしは言った。

「えと…ゴメンね、色々と」

「慣れてるわよ。セリカが泣いて帰ってきたら慰めてあげるわ。そうだ、DNA鑑定の結果が出たって聞いたわよ?」

「DNA鑑定?」

「龍之介くんの。本当に小林仁奈の子供かどうか」

一応、鑑定してたんだ…これであたしの犯罪は確定したって事よね。

「そう…分かった。ありがと」

「じゃね、頑張って」

遠藤さんがエレベーターに乗り込むまで、あたしはその姿を追っていた。

エレベーターのドアが閉まり、廊下にはあたしの存在だけになる。

何度も何度も深呼吸して、震える手でチャイムを押した。


「ピン…ポーン」

思ったより高い呼び鈴の音。次いで鍵が開く音がして…ゆっくりとドアが開いた。


   ドキン



中には久しぶりに会った仁奈ちゃんの姿。

すっかり痩せて、疲れていたように思えた。

ある意味、予想していた通りの姿…だけど現実を目の当たりにすると心が痛んだ。

話しなんかせずに、この場から逃げ出したくなる。

「…お久しぶりですね。上がってください」

あたしは逃げたいのを我慢して、一歩を踏み出した。
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