BABY×DOLL

「私も子供を堕ろすように言われたんですよ」

「ウソ…」

「もちろん私は断りました。結婚できない相手だと知りながら子供を作ったのですから…当然、シングルで育てるつもりでした。

でも…それすらも許されない相手の子供だったんです」

「それはもしかして…相手は芸能人なの？」

しかも大物？
もしくは政治家…

「それは言えません。それでも産みたかった。彼の事を愛していたし、出来た子供も愛していたんです。

で、悩んで…つい虎之介さんに相談してしまったんです」

「…そう」

「彼が『オレと結婚して、子供はオレの子って事にしてやる』と言ってくれたんです。

私、まさか彼がセリカさんと付き合ってたなんて知らなかったし…虎之介さんの事は嫌いではなかったから、嬉しくて
その言葉にすがってしまったんです」

「そう…そうだったんだ」

──やっと分かった。虎之介のこと…

そう言えば、すぐ誰かのチカラになろうとする人だったのかもしれない。

あたしと出会った時のように…

「今にして思えば、私もどうかしていたんです。冷静に考えて、彼にそんな一生モノの責任を負わせるなんて…でも考えないようにしてたんです」