BABY×DOLL
あたしの謙遜をディレクターがフォローする。

「いやいや、ホント、セリカちゃんは上手い事いってるよね。勢いがあるっていうのかな?これまで順風満帆できてるでしょ。運も実力のうちってやつだね」

「あ、ありがとうございます」

あたしはお礼を言った。もちろん表面だけのね。

順風満帆?
──そうかしら?
あたしが何の苦労もしてないとでも?

総てが上手くいってるって?

上にいく為に努力して

登りつめたら、そこから落ちない為に、また努力しなきゃいけなかった。

その為に犠牲にしてきたものがある──

「ところで、セリカちゃんは誰と仲良くしてる?」

「え?」

「ほら、芸能人の友達とか…」

「あ…あたし一般の友達が多いんですよ~オフの日も地元の友達と買い物行ったり、カラオケ行ったりなんです」

「なるほど、昔からの友達と遊んでるんだね?」

「まぁ…そうです」

…ホントは嘘だけど。

「元『tr@st』のメンバーとは会わないの?」

「スケジュール合わなくて…あんまり会えないんですよね」

…これも嘘。

あの子達とは考え方が合わないし、ただメンバーだから一緒に仕事してたけど
だからって友達なんかじゃない。
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