BABY×DOLL
もう、そう言うしかなかった。

『これからスタッフと晩飯なんだ』

「うん…わかった」

『また電話するから』

そう言って彼から電話を切った。

もう彼とは繋がってない電話の音が、虚しく響く。

──納得なんかできない。でも彼の言い分もわかる。

意見が受け入れられないからって怒ってるワケじゃない…ただ公表できないのが辛かった。

まだ彼が帰ってくるまで日数がある。

離れてると不安なの
誰かに捕られそう。
公表すれば…彼はあたしのものになるのに…

あたしは焦りにも似た気持ちを抱えていた。



それから二週間…
忙しいのか時間が取れないのか、虎之介からの電話はなかった。

毎日が、ただ苦しかった。

…好きな人に会えないことが、こんなに辛いとは思わなかったよ。


その日は昼食をとりながらの打ち合わせをしていた。

──その時、初めて自分の身体の変化に気付いたの。

変に胸ヤケがする…?

しばらくすると治まったけど

家に帰るなり、胃の中のものを全て吐き出した。





   ドキン






──あたし…この前、生理がきたのはいつだった?


──当たり前のように




あたしは妊娠していた。
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