BABY×DOLL
あたしの目はTVの中の虎を確かに映し出しているのに
状況が頭に入ってこなかった…

「どういう事…?」

信じられなくて他の局に回したけど
ライブ映像だった二人の会見は、どの局も同じ場面を映していた。

何度も何度も繰り返す。

「こんなのウソよねぇっ?!あたしを騙そうとしてない?」

「貴方達が付き合ってたなんて知ってる人が誰かいた?」

「…!」

誰も知らない…
だって秘密だったもの

「セリカが診察を受けてた時に会見が始まったから私、見てたの。彼女、妊娠二ヶ月ですってね。セリカ…貴方と同じくらいだわ」

───そうよ

だって愛し合ってたんだもん

めちゃめちゃ愛し合ってた…

今、虎の隣で

順番間違えて〔できちゃった〕けど、彼が責任とってくれて…幸せそうな顔をして結婚会見してるのは

『あたし』だったはずよね?

…どうして違うの?



どうしてあたしは
こんな場所で彼を見てるの?

…どうしてあたしじゃないの?


「嫌…っ…こんなの違う!信じない!」

あたしはTVのリモコンを壁に投げつけた。続いて枕。手当たり次第物にあたり散らし

怒りや悲しみが内から沸き上がるのを抑える事ができなかった。
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