くすり
くすり
「やい。くすりはまだか」

「いつになったら学習するのですか。部屋に入るときはノックをしろと言っているじゃあありませんか。それに、いま何時だと…」

「そんなことはどうでもいいのだ。くすりはまだかと聞いている」

「まだです」

「いつになったら完成するのだ」

「来年くらいになるかと思いますが」

「なんだと、来年だと!まったく、笑わせてくれる。私は急いでいるのだ」

「そんなことはわかっています」

「約束した金の半分はすでに支払った。あとはおまえがそのくすりを完成させるのを待つだけだ。それなのに、来年とは。せめて今年中にはできんのか」

「いくらなんでもそれは無理です。ここまでくるのにたくさんの時間がかかりましたし、まだしなければならないことが山積みなのです」

「おれの件はどうでもいいのか」

「そんな事は言っていませんよ」

「なら早くしろ」

「わかっていますよ。はやく出ていってもらえませんか。仕事の邪魔です」

「わかったよ。また来る」

「……はあ。やっと帰ってくれた。こっちは薬の微妙な調合や、書類のまとめで忙しいってのに、嫌な客だ。…ああ、いけない。年越しそばを食べないと」


12月31日、23時56分の会話。
薬剤師に休みはない。
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