境の娘
調子外れな東の歌を口ずさみながら、飴売りは里を練り歩いた。
その後ろを子供たちが、腹を抱えながらついてくる。
賑やかな行き人に、大人たちも畑仕事の手を休めて顔をあげた。
都から遠く離れたこの地では、飴売りの飴を買うほど裕福な者はほとんどいない。
実入りが少ない上に、旅には常に危険が付き纏った。
そのため、都周辺を縄張りとする飴売りたちは、遠出することを嫌う。
男は根っからの商売人ではなかった。
半端者は所詮どこへ行っても半端者である。
ゆえに、都で縄張りを争い気を揉むよりも、旅をしながら売り歩く方が、気楽で性にあっていた。