なまけ神
「安藤美樹のことなんか心配してねえ。あんたのことだってどうでもいい」
そこまで言うと、ふと、彼女は寂しげな表情を見せた。
先程までとは違う、女の子の顔だ。
「ただ、あの子が戻って来ないと、あたしが困るんだ」
*
「ただいまー」
アパートのドアを開ける。
「ただいま」、といっても、実のところ僕の家じゃないんだが。
靴を脱いで上がると、一番手前の部屋から女子高生がお玉を片手に顔を出した。
「あ、神戸さんおかえり。珍しいね、日曜に出掛けるなんて」
黒髪におさげ姿。
安藤美樹だ。
「うん。ちょっと用で」
「ふーん。それより、晩ごはん出来たから」
そう言い流すと、彼女はまたキッチンに入って行った。
出掛けていたことは会話の流れで聞いただけで、何の用かは別にどうでもいいらしい。
休みの日は専(もっぱ)ら家にいる僕が出掛けたことを、自分のことで出掛けた、とは普通思わないだろうが。
先程の出来事ですっかり二日酔いも覚めてしまった僕は、上着を脱いでダイニングに向かった。
そこまで言うと、ふと、彼女は寂しげな表情を見せた。
先程までとは違う、女の子の顔だ。
「ただ、あの子が戻って来ないと、あたしが困るんだ」
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「ただいまー」
アパートのドアを開ける。
「ただいま」、といっても、実のところ僕の家じゃないんだが。
靴を脱いで上がると、一番手前の部屋から女子高生がお玉を片手に顔を出した。
「あ、神戸さんおかえり。珍しいね、日曜に出掛けるなんて」
黒髪におさげ姿。
安藤美樹だ。
「うん。ちょっと用で」
「ふーん。それより、晩ごはん出来たから」
そう言い流すと、彼女はまたキッチンに入って行った。
出掛けていたことは会話の流れで聞いただけで、何の用かは別にどうでもいいらしい。
休みの日は専(もっぱ)ら家にいる僕が出掛けたことを、自分のことで出掛けた、とは普通思わないだろうが。
先程の出来事ですっかり二日酔いも覚めてしまった僕は、上着を脱いでダイニングに向かった。