なまけ神
迷った挙げ句、腰の角度を戻そうと手で膝を押し返した瞬間のことだった。

ハグシッ、と、おっさんをイメージさせる強烈な音が目の前で破裂した。

景色も空気も凍った気がした。

隣にいた不良グループも、馬鹿笑いを止めて、見開いた目を一斉にこちらに向ける。

俺はまた迷った。
えーと、こういうときはどうするべきなんだろうか。

どりあえず、俺は不良グループの視線から彼女を庇(かば)うように隣に腰を下ろした。

コンクリートの冷たさが尻に伝わる。

彼女も恥ずかしいはずだろうから、俺も遠慮がちに訊いた。「ティッシュ、いる?」

「……いい」

顔を上げずに彼女は言った。やはり、恥ずかしがっていた。
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