Desire of cherry blossoms
■Confession
「おいガキ!ぶつかっといてシカトかよッッ!?」
「ご………ごめんなさい…」
「あッ!?なんだ?声が小さくて聞こえねぇなぁー!」
「ごめんなさい………」
「ナメた真似しやがって!」
「バカかお前?こんなガキ相手に」
「…ゼファ…………ッッ!」

そうだ。これがゼファさんと初めて出会った日。

「おいガキ。帰っていいぞ」
「あ………………」
「どうした?おうち帰っていいぞおチビちゃん」


去年、繁華街で恐い人にぶつかって、怒鳴られてた私を助けてくれた人………。ゼファさんが声をかけただけで、恐い人達はみんな去って行った。
よくその辺にいる軍人さんとはちょっと違う軍服を着た人。でも、確かにあれはヴァリーフォージのエンブレム。あの時見た笑顔が忘れられない。私の初恋だった。


ただあの人を近くで見たかった。それだけの理由で今年、ヴァリーフォージの軍務養成所に入った。自分には向いてないのはわかってるけど、それでもよかったんだ……。


それでもよかったはずなんだけど、何ヵ月経ってもあの人を見かけることすらなかった。あの時のお礼………。言ってなかったし。


「なんでどこにもいないんだろぉ………」
「またあの『初恋の人』?」
「うん…………」
「いい加減誰だか教えてくれてもよくない!?軍の人間なんでしょ!?」
「そのはずなんだけど……」
「そのはずッッ?」
「うん………」
「名前は?」
「たしかあの恐い人達………、ゼファ?って呼んでた」
「……………ッッ!」
「な………何〜?知ってるの………?」
「あんた………悪い事は言わない。………やめときな」
「何で………?」
「ほんっっと何も知らないんだから!」
「だから何〜!?」
「そりゃほとんど見るわけないよ!あの人……、有名だけど工作員だよ!?そう簡単にお目にかかれるわけないっしょ!それに………」
「そ……それに?」
「女いるよあの人は。同じ工作員のすっごい綺麗な人」
「やっぱりいるんだぁ〜。……いないわけないかぁ」
「プレイボーイらしいしねー」
「プレイボーイッッ!女いるのに⁉︎」
「そこまで驚きますか」
「プレイボーイ………。す……すごいなぁ」


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