野球バカとあいつバカ
プロローグ
中3 春休み
「キャッチボールしようぜ」
あいつはいきなり立ち上がり、自転車のかごからグローブとボールを取り出す。
「え?無理無理。私、できない。」
私はベンチに座ったまま答える。
「いいから!ほらっ!」
グローブが飛んできた。
「はいはい。」
私はしぶしぶとベンチから立ち上がる。
「いくぞ~!」
「お手柔らかにね~!」
小学生のときも、ここのグランドでキャッチボールしたよね。
ホームランを打ったあいつ、走り回ってたあいつ、
自主練してたあいつ、白球を追いかけてたあいつ、
仲間と溜まってたあいつ、祭りでバカ騒ぎしてあいつ、
私にとって、ここのグランドは、特別の場所。
あいつが野球バカなら、
私はあいつバカだ。
私はあいつが好き。