hiding
CHAPTER 1
子供の時の私は可愛かったと母は言う。

今は?と訊くと返ってくる言葉に耳を塞ぎたくなる。

やっぱり訊くんじゃなかった。後悔したって遅い。言葉はナイフのように胸を切りつけるだけで、私を傷つける以外の何者でもないと、そう思っていた。




私には2つ上の姉がいる。姉は成績は普通だが明るく優しい性格で、母とは上手くやっていた。母も姉を可愛いがっていた。私なんかめじゃない程に。

私は成績が上の方だったから、母はその事は誇りだったようだ。しかし高校で上位の成績がとれなくなると私を馬鹿と罵った。

私と度々衝突すると、ご飯抜きは勿論、母は洗濯機から私の洗濯物を投げ捨てたりした。

しかし何より傷ついたのは、父や姉に私の悪口を言う事だった。私に聞こえるように大きな声で。私に味方なんていなくなる。

居場所がなくなった私は自室にこもるようになった。最初はベッドで声を殺して泣きもしたが、今は泣くのも馬鹿馬鹿しい。部屋で1人母の言葉を反芻するだけ。

「顔を見たくない」
「私の子供じゃない」
「殺してやりたい」

私と姉とが母と言い争った事も勿論ある。翌日母は泣きながら私に姉への謝罪の言葉を零した。私への謝罪は、なかった。

高校の入学式に見えない所で打たれた事もあったな、と嫌な事も思い出す。あの時は痛みよりもただ恥ずかしかった。

そういう訳で今に至る。要するに私は、引きこもりなのだ。
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