hiding
元を正せば結局原因は自分にある。私が変わらなきゃ何も変わらない。

このままでいいなんて思わない。私、変わりたい。菜々子みたいになりたいな。

少し、そう、ほんの少しだけ輝きたい。

私だって女の子だもの。素敵な恋をしたい。心から好きだと思える人と。今はまだわからないけど、きっと誰かを好きになれる。

リビングに顔を出して、母親と一言二言会話をしてお風呂に入る。

母が私に冷たく当たるのは機嫌の悪い時だけだ。機嫌が良いと今みたいに言葉を交わす事もある。

いつも機嫌が良いといいんだけど。でも、ふとした瞬間に気付いてしまうのだ。

私、愛されてない。
大切にされてない。

やだ、また嫌な事を思い出してしまった。

シャワーを勢い良く出して頭からかぶった。温かさがじんわり広がる。

流してくれたらいいのに。悲しさも寂しさも後悔も何もかも、綺麗さっぱり洗い流してくれたらいいのに。

湿度の高いお風呂の中では、心まで湿っぽくなってしまうのだろうか。私は振り払うように頭を振った。好きな歌を小さい声で口ずさんでみる。

歌は大好きだ。癒される。だってもう、気分が明るくなった。明日が来るのが、いつもよりちょっと待ち遠しい。
< 10 / 67 >

この作品をシェア

pagetop