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「佐倉…先生はもういいって…」

緋山君は困ったような、でも相変わらず涼しい笑顔を浮かべている。大人びていてやはりキラキラしている。

ふと、ある事に気付いた。

「先生、寝癖」

真っ直ぐな黒髪の上の方が確かに崩れている。手を伸ばしてピョンピョンはねている髪に触れた。

よく見ると小さく肩が上下していた。きっと走ってきたのだろう。心なしか頬も赤い。

「ふふ、先生でも寝坊する事あるんだね」
「なっ……」
「はいはいそこまで-」

何故か雨森君が私達の間に入ってきた。菜々子を見るとやれやれといった顔をしている。

「なんかやめろよその2人の世界みたいな雰囲気。俺だっているんだからな!!」

なにやら必死な雨森君が可笑しくて私は笑ってしまった。

「何で笑うんだよ」
「だって雨森君子供みたいだから」
「…っ!!どうせ俺はガキだよ」
「違うの。良い意味で、だよ」

私はまた笑った。あんまり笑うと雨森君が拗ねるから、今度は少し控え目に。

「薺菜ってば、小悪魔だね」

からかい口調の菜々子に言われてハッとする。

そっか、そうだった。中1以来関わってないから、私、男の子との接し方が解らないんだ。

どんな距離を保てばいいのか解らない。でももう高3だから、無闇に触っちゃいけないよね。

私が余程情けない顔をしていたのか、菜々子は、まぁそこが薺菜の良い所だけど、と優しく微笑んでくれた。
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