hiding
なんか擽ったい。あまり人に褒められた事がないからどう返していいのか解らない。

私は褒められて伸びる子じゃない。褒められると「自分、天才じゃん」と調子にのって終わる。かと言って貶されて伸びる子でもないけど。

母には貶されてばかりだ。しかし褒めて欲しいとは以前程思わなくなった。もう諦めの境地である。

割り切るといくらか気持ちも軽くなるのだ。それは唯の逃げで、一時的なものだけど。

「薺菜。何難しい顔してんのよ」

菜々子の声で我に返る。

「私はそのままの薺菜が大好きよ」

だから、擽ったいってば。

自然に緩む頬。笑顔になった私を見て、菜々子も笑顔になる。女の私もドキッとするような綺麗な笑顔。キラキラしてる。

「私、菜々子のキラキラは全然平気なの。寧ろ大好き」
「可愛い事言って。食べちゃうわよ」

菜々子が私を抱き寄せて頭をよしよし撫でている。私は思わず目を細めた。

「という訳だから、あんた達には渡さないわよ。私も参戦するわ」

菜々子が小さな乱闘を繰り広げていた緋山君と雨森君に指を突き付けて、宣戦布告した。

「ちょっ、菜々子、お前どういうつもりだよ。俺も負けねえからな!!」

どこから湧いたのか小日向君も参戦してきた。

「わ、私も参戦す…」

なんかそういう流れのような気がしたから名乗りをあげたのだけど。

「「お願いだから空気読んで!!」」

4人に凄まれた。落ち込む。
< 15 / 67 >

この作品をシェア

pagetop