hiding
あれからしばらくすると、あの3人の男子とも仲良くなった。週に1回一緒に帰っていたら嫌でも距離は縮むものだ。

ある金曜日、紫陽君と帰っていると道路沿いの家の庭にアジサイが咲いていた。

私は思わず駆け寄った。と、置いてきた紫陽君から情けない声が聞こえる。

「うわっ冷たっ!!」

あ…忘れてた。相合い傘してたんだった。私の、白のフリルがたくさんある折り畳み傘で。

折り畳み傘なんて持ち歩かねえよ、って紫陽君に言われた。

「何だよ急に走って」
「う…ごめん」
「そのメルヘンな傘でも、ないと困るんだからな」

うん、紫陽君になかなか似合ってるよ、この傘。

「でも、雨森君って雨に濡れて歩きたそうだもの」
「いくら名字に雨ついてたって…」
「名前だよ」
「…名前?シノハルが?」

雨森君は不思議そうに首を傾げた。

「紫陽君の名前の漢字に花ってつけると、紫陽花になるんだよ」
「アジサイ?」
「ほら、この花。綺麗に咲いている」

所々にピンクの花が混じった、水色の花の紫陽花の株を指差した。

「紫陽花はね、日当たりが苦手なの。花言葉は、移り気。ふふ、紫陽君に似てるね」

どういう事だよそれ、と紫陽君はむくれている。

だから私は補足した。
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