hiding
初夏の日差しは結構暑くて外にいるとじんわりと汗が滲む。

水曜日。葵君との帰り道。

私はなるべく日陰を歩きながら青い空や家々の庭を眺めて夏を満喫していた。

引きこもりなもんだから、日差しに弱いのだ。

「あ、向日葵」

私が視線を向ける先に、葵君も視線を向けた。

それはまだ小さくて、でもしっかりと太陽を見つめている。

「ヒマワリ、好きなの?」
「植物はみんな好きだよ」

そういえば、と私は続ける。

「葵君もなんだね」
「何が?」
「小日向葵。名前の中に、漢字の向日葵があるの」
「あぁ、確かに並べ替えるとそうだね」

向日葵は恋する乙女なんだよね。太陽に、恋い焦がれるの。

「私はあなただけを見つめる」という花言葉は、太陽に顔を向ける向日葵の姿からついたものだろう。

健気に、太陽を想って。届かなかった想い。

私はどうだろう。望まれて産まれてきて、期待に応えられなかった私を、母は分かってくれるだろうか。

無理、かもしれない。私、悪い子だから。性格も素直じゃないから。可愛く、ないから。

私はブンブンと頭を振った。

だめだ、私、変わるんだから。卑屈になっては前に進めない。

歩かなきゃ、自分の足で。

「薺菜、どうかした?」

ハッと我に返る。

「大丈夫」

笑顔を作る。条件反射みたいに私はいつからか笑顔を張り付けるのが癖になっていた。
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