hiding
私は自分の笑顔が嫌い。薄っぺらい作り笑顔。

笑い方を思い出せない。心の奥に隠して、蓋をして、鍵をかけたから。

「無理して笑わなくてもいいから」

その言葉を、待っていたのかもしれない。

私よりも僅かに高いだけの小柄な葵君が、菜々子や紫陽君にチビチビ馬鹿にされてる葵君が、

少し、大きく見えた。

嫌な事は、吹き飛んだ。気分が軽い。

「ありがとう」

私は微笑んだ。自然に、笑えた。

「やっぱりその笑顔が1番だ」

言って、葵君がにぃと笑う。キラキラしてて明るくて、向日葵みたいないい笑顔。

「葵君って向日葵みたい」
「可憐な乙女って事?」
「笑顔が素敵って事」

だいぶ慣れてきたキラキラした雰囲気も、今では心地良い。

調子に乗って日陰から出てみたら、でもやっぱり日差しは苦手だった。クラッとする。

「えっちょっと!?大丈夫か?」

今度は正直に答えた。

「む…り…」
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