hiding
夏休み。皆大好きな夏休み。皆はしゃいでる。

私は、あんまり好きじゃない。

学校に行けないと皆に会えない。そりゃ、たまには遊びに行くけど、

私の居場所が、なくなっちゃうから。

毎年私は学校の図書室か市の図書館で過ごしている。涼しくて、快適。

宿題をしたり、読書したり、本当便利な避難所。母から八つ当たりされる心配もないし。

…そう、結局のところ、母とは全然分かり合っていない。私は逃げ回るばかりだ。

部屋にこもって、布団を頭から被って、壊れればいい、歪めばいいと後ろ向きな事ばかり渦巻く。

最近気付いた事。泣く演技って難しいけど、泣くのを我慢するのってもっと難しい。

どんなにきつく唇を噛んだって、どんなに上を向いたって、涙はこぼれた。

上を向いて歩こうっていう歌があるけど、あれって、ウソだ。

「佐倉?顔恐いよ」

未だに私を名字で呼ぶのは緋山君だけだ。頬を緩めて、私は顔を上げた。

「…先生」
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