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夏祭り当日。待ち合わせ場所に紫陽君と緋山君が先に来ていた。

「紫陽君が時間通りに来るなんて珍しいね」
「30分遅刻した奴の言う台詞じゃねえだろ」
「大丈夫だよ、佐倉。こいつもさっき来たばかりだから」
「緋山!!お前余計な事を…」
「先生、待たせてごめんね」

遅れた理由、訊かれなかった。私はホッと胸をなで下ろした。

今日母は機嫌が宜しくないらしく、夏祭りに行くと告げると突っかかって来た。

また、逃げて来た。また、私の気持ちをぶつけられなかった。

母ははっきりしない子が大嫌い。私、みたいな。悪いのは、私。

「かき氷食べようよ」

甘い物でも食べて気を安めよう。冷たい物でも食べて頭を冷やそう。

「俺メロン」
「私イチゴ」
「…………」

なんで僕が、とかブツブツ言ってたけど緋山君が私達の分も買いに行った。

「紫陽君、メロンって意外」
「何でだよ」
「なんか、『俺ブルーハワイ!!』とか叫びそう」
「馬鹿にするなよ、ブルーハワイは中2で卒業したんだよ!!」

「お待たせ」

戻って来た緋山君が持っていたかき氷が、メロンとイチゴとブルーハワイだったので、私達は笑った。

「?何笑って…」
「気にしないで。ありがと、先生」
「きゃははははは」

紫陽君はまだ笑ってる。

5分後、漸く笑いが収まった紫陽君が緋山君の肩をべしべし叩いて言った。

「緋山、お前サイコー」

緋山君はあからさまに嫌そうな顔をした。
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