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2人共着付けが終わると菜々子が抱きついてきた。

「きゃー薺菜可愛いー!!」
「菜々子こそ。キラキラしてる」

菜々子は紺の生地に白と紫の金魚が泳いでる浴衣。黄色の帯で大人っぽくも可愛い、菜々子によく似合っている。

私は濃い水色の生地に白とピンクの花が咲いている浴衣。赤い帯にも白い花が散らしてある。

髪も春菜さんに結ってもらった。高い位置に緩めのお団子。

「菜々ちゃんは髪が短いから、髪セットするの久々で楽しいわ」

と、春菜さんは嬉々として結ってくれた。

「お待たせー」

戻ってきてみると3人は仲良く土手に寝転んで青春していた。

「ちょっとあんた達、見てよこの可愛い生き物を」

菜々子は背中に隠れていた私をぐいっと前に引っ張った。

「似合ってるじゃん」
「佐倉らしいな」
「…ありがと」

下駄のせいで先程より高い位置にある葵君と、元々高い位置にある緋山君の顔になんとか笑顔を向ける。

ストレートに褒められて顔が赤くなる。照れるじゃん、もう。

「おぉ薺菜。馬子にも衣…グハッ」
「あれ?紫陽君、蚊がいたよ」
「蚊をグーで殴る奴がいるかよ!!」

紫陽君は、相変わらず私をおちょくってくる。

「あーもう、冗談だっての。…よく似合ってるよ」

紫陽君が照れてるのがわかって、私まで恥ずかしくなってきたので、照れ隠しにもう一発、軽く殴ってやった。
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