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CHAPTER 3
「なぁ薺菜。今日って俺達のデートだよな」
「うん」

春が再び来ていた。まだまだ日差しは苦手だけど、太陽の暖かさが嬉しい。

「じゃあ何でこいつらがいるんだァァ!!」

叫んだのは一応私の彼氏の橘蓮君。で、こいつらとは。

「おい薺菜、次あれ乗るぞ」
「僕は絶叫マシンは苦手だから…」
「じゃあお前待ってろよ。俺らだけで楽しんでくるから」
「ちょ、待てよ」

葵君、緋山君、紫陽君。と、ヒーヒー笑っている菜々子と苦笑いの楠本さん。

手を振ってくれるキャラクターを猛然と無視して葵君と紫陽君は私を引っ張り絶叫マシンへと駆ける。

新調したワンピースが翻るのを気にしている暇なんてない。急がないと何分も待たされるのだ。

その姿を肩を落として見ている蓮君と、それを慰める緋山君。2人共絶叫マシンが苦手だからベンチに座っている。

「薺菜の彼氏は俺だっての」
「僕も彼らも彼女が好きなんで。ぼさっとしてると取られるよ」
「はぁぁ…お前らは…」
「まぁいいんじゃない。佐倉、楽しそう」
「……だな」

そんな会話が繰り広げられてるなんて知らない私は子供に返ったようにはしゃいでいた。
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