hiding
日も沈んで来た。夕日に朱く染まる皆の髪が綺麗だった。

「俺らはまだ絶叫行くから、薺菜は、ほら、観覧車でも乗れよ」
「え…」
「橘、後は頼んだ」

急な展開に混乱する私の手を無言で握る蓮君。熱が伝わって来る。顔が朱いのは夕日のせいだけじゃないみたい、私も。

観覧車まで辿り着いた時には太陽は山に沈んでいた。

「………」
「………」

ゴンドラの中でも沈黙。向い合せが恥ずかしくて私は窓の外を見つめたが、綺麗な夜景も頭に入らなかった。

「…薺菜」
「は、い」
「こっち向いて」

とっさに目を閉じて恐る恐るゆっくり振り返る。と、唇に柔らかい感触。

慌てて目を開けたら視界いっぱいに蓮君の端正な顔。ああ、どうしよう。心臓が速い。顔から火炎放射だよ。

目を再び閉じて、蓮君が離れて行くのを確認して、また目を開けた。

ねぇ、菜々子。私キスしちゃったよ。確かに幸せなんだけど、これじゃ私の心臓がもたないよ。

だって、目の前で前髪をかき上げてあーとかうーとか言っている蓮君が愛おしすぎて。
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