hiding

winter again

高3の冬。皆で集まれる恐らく最後の長い休み。

私は卒業したら他県の大学に進学する。蓮君は地元のサッカーチームに入団する。

「高校最後の思い出に旅行でもしようか」

蓮君にそう誘われて、私はちょっと遠くの温泉に泊まりに行く事になった。

私は修学旅行のノリでわくわくしていたが、はたと2人きりという事に気付いて赤面する。

ふ、2人きりって!!

私達はもう子供じゃない訳で。つまり…

「あんな事やこんな事もしちゃうの…?」

ちょ、待って、心の準備がぁぁぁ!!

私、抱き合ったのも、キスをしたのも、蓮君が初めてで。

え、モンスターとは何をしていたかって?

そりゃあ、何もしてませんよ。一番過激なボディタッチは風に靡いた私の髪がモンスターを掠めたくらいですよ。

何やってんのよ私は。この18年は何だったのさ。

鏡の中に映る自分を見つめる。すっぴんだし、癖っ毛だし、頬は僅かに紅潮している。

我ながら、風呂上がりは格別に色気がないと思った。
< 54 / 67 >

この作品をシェア

pagetop