hiding

spring again

菜々子は私に引っ付いて泣いていた。頭や背中をぽんぽん叩いて私は「大丈夫」を繰り返した。

皆離れ離れになるけど、最後も、私はやっぱり笑顔でサヨナラをしたかった。皆が好きだと言ってくれた、笑顔で。

「菜々子、これから思い出作りに行こうよ」

屋上で、菜々子と私の2人きりで、寝転がっていた。本日は快晴。喋る度に白い息が青い空に吸い込まれた。

「橘君も誘って?」
「あ…ううん、今日は、友達だけで」
「ふふ、あいつら喜ぶよ」

皆に感謝を伝えたい。尽くされてばかりだったから、何か恩返しをしたい。

蓮君にはデートで会った時に伝えよう。

呼びに行こうと立ち上がると3人がこちらに走って来た。

「よくここがおわかりで」
「薺菜の匂いがしたから」
「…犬?」

「喜べ3馬鹿トリオ。薺菜が皆でデートしようって」
「え!!マジでか!!どこ行く?」
「ん…その、皆で学校見て回りたいな」

「いいね!!じゃあまず私と薺菜で行ってくるから、3人はじゃんけんで順番でも決めて待ってな」

え、そういう形式なの?

まぁいいや。菜々子はぐいぐい私を引っ張って屋上を出る。ドアが閉まる前に、威勢の良いじゃんけんの掛け声が聞こえた。
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