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もう校舎には誰もいない。私達はぴったり寄り添って歩いた。

ガラガラッ。

「うわぁ懐かしいなぁ」
「本当。私がここの席で、菜々子がそこだった」

1年生の教室。そういえば私と菜々子は3年間同じクラスだ。

「私の隣、葵だったの」
「え、そうなの」
「薺菜の席からは見えないかもね。あいつチビだから」

葵君、ご愁傷様。

「次、音楽室行こう」
「賛成ー」

ガラガラッ。

ピアノに触れたのは2人同時だった。そのまま自然な流れで連弾を始めた。

「ねぇ菜々子」
「なあに」
「ありがとう、大好き」

そう言って菜々子に抱き付けば、優しく頭を撫でてくれた。

「卒業式で薺菜が泣かないなんて変だと思ったのよ」
「うっ…菜々子ぉ…ひっく」

私達は抱き合って、ひとしきり泣いた。
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