hiding
「寒い!!紫陽君の馬鹿野郎」
「屋上さみー」

髪から水を滴らせる私達を見て当然皆は目を丸くした。

「どうしたの?2人して濡れちゃって」
「紫陽に何されたんだ」
「あんな事やこんな事…」
「断じてしてねぇ!!」

屋上は風が強い。口を閉じるとついしかめっ面になる。その方が私には好都合だ。涙を堪えているのが判らないから。

「私…皆に随分支えられた。友達みたいな、家族みたいな、恋人みたいな、大切な存在なの。本当に本当にありがとう」

ちょっと照れくさいから皆に背を向けて一気に言ってのけた。くるりと向き直ると皆が飛びついて来た。

「もぅ、薺菜大好きよ」
「俺の方こそありがとな」

…笑顔でお別れなんて、やっぱり無理だ。涙が後から後から流れてくる。

「私……私は幸せ者です」

3月はまだ寒い。だけど、春は必ずやってくる。別れを経て、出会いを経て、大人になる季節が、今年もまた、やってくる。
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