hiding
走って走って、大きな通りまで来たところで漸く止まった。2人とも肩で息をしている。気が付けば握られていた手が痺れていた。

「あの…有り難うごさいました」

我に返ったのかパッと手を放し、私を助けてくれた人がこちらを向いた。初めてまともに顔を見た。

うわっ。キラキラ。

「バカやろう!!あんな怪しい奴ら信用すんじゃねぇよ」
「ひっ、す、すみませんっ」
「男相手に勝てると思ったのかよ」
「め、滅相もございません」

あ、よく見たらこの人恐い。さっきの人達より遥かに恐い。耳に沢山ピアスをしてるし、制服は着崩している。…ん?制服?

「あの、学生さんですか?」
「は?俺お前とクラス同じだし」
「え…と、…え!?」
「雨森紫陽って、言っても知らねえか。殆どサボってるから」

シノハル君。恐いけど笑うといたずらっ子みたいで微笑ましい。と言うか眩しい。

「私、佐倉薺菜です」
「知ってる。つーか敬語やめろよ。タメなんだし」
「…ひゃっ……」

安心して腰が抜けてしまったからか、久しぶりに走って膝が笑ってるからか。私は地面にへたり込んだ。

「おい、大丈夫か」
「なんか、力抜けちゃった」

緊張も解けて私はへらりと笑った。雨森君が私の両腕を引っ張って立たせてくれた。

「送ってやる」
「…お願いします」

ここは素直に甘えておこう。

夜が目覚めた道を、手を繋いで歩いた。もう大丈夫、と言ったけど、なんか危なっかしいから、と雨森君はずっと手を握っててくれた。

キラキラで恐くてぶっきらぼうだけど、優しい人だな。ちょっとだけ笑みがこぼれた。
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