hiding
家に帰るといつものように部屋に直行した。やっぱり自室は落ち着くわ。疲れがどっと押し寄せる。最近心が安まっていなかったからかもしれない。

なんせ2日間で3人のキラキラな男子と出会ったのだ。小日向葵君。緋山紅葉君。雨森紫陽君。

そういえば皆、素敵な名前だ。お花みたい。ヒマワリ、モミジ、アジサイ。

菜々子に会いたい。会って、話を聞いてもらいたい。

キラキラを、少しだけ好きになれそうなんだよって。

私は布団を頭からかぶって、昔を思い出していた。私が格好良い人を拒絶するきっかけになった出来事を。

中1の春、入学早々に私は友達と上手くいかなくなった。女の子は皆その子を恐がって私を仲間外れにした。その頃はまだ菜々子と出会ってなかったから、私は独りぼっちになった。

帰り道を1人で歩く事が増え、その日も1人で帰っていた。

「佐倉。お前大丈夫なの?」
「……橘君」

橘君は小学の時からの友達で、よく私をからかってくるやんちゃな男の子。切れ長の目とスッとした鼻筋の格好良い少年。

「何があったか知んねえけどさ。俺もいるんだから、辛い時は頼れよ」
「…有り難う。心強いよ」

その光景が誰の目にどう映ったのか。翌日から私は男たらしとして知れ渡る事になったのだった。

橘君は悪くない。寧ろ感謝しているし、心配かけてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱい。これ以上迷惑はかけられない。私はそれから橘君を避けてしまった。

キラキラした男子が苦手なのは、そんな臆病な理由からなのだ。
< 9 / 67 >

この作品をシェア

pagetop