青蝶夢 *Ⅰ*
壁に、もたれかかる芳野は
煙草を銜えて一服する。

芳野の吐いた煙が
風に揺らめき、人込みの
方へと流れていく。

「また
 あそこに戻るのは
 嫌だな
 ここでいいや
 
 ヒイロ、これで
 何か冷たい飲み物
 買って来てよ」

そう言って、芳野さんは
上着のポケットに入っていた
財布をそのまま私へと投げた

「えっ」

驚く私は、その財布を
落とさないように
上手にキャッチする。

すると、芳野さんは
一方を指差した。

「あそこに
 自販機、ある
 
 俺、珈琲
 イブキ、お前は?」

「俺が行・・」

「俺と一緒でいいよな?」

重なる声・・・
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