青蝶夢 *Ⅰ*
そして、見上げる女性の
赤い指先が、彼に頬に触れ

見詰め合う二人は
口づけを交わす。

痛い・・・

胸が痛い。

「ヒイロ、さあ乗って」

「はい」

私は、車に乗り込み

自分の唇に指先で
そっと、触れ
その手を握り締めた。

助手席のドアが開く・・・

「ごめん
 ヒイロ、これ
 そこ、置いて」

芳野さんは、振り返り
買い物してきた荷物を
運転席の後ろに座る
私に渡した。

「・・・はい」
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